精神科病院の医療保護廃止が後退 次回の厚労省検討会で再修正案

福祉新聞の記事を掲載します。

 精神科病院の医師が家族らの同意を得て患者を強制的に入院させる医療保護入院制度について、厚生労働省は5月30日、検討会の報告書案から「将来的な継続を前提とせず課題を整理する」との文言を削除した。当初は「将来的な廃止も視野に、縮小に向け検討する」としていたが、一段と後退させた。この点に複数の委員から異論が上がり、厚労省は9日の次回会合で再び修正案を示してまとめる予定だ。

 同日の「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」(座長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所長)に示した報告書案は医療保護入院について「誰もが安心して信頼できる入院医療が実現されるよう課題の整理に取り組む」とした。

 当初の記述から大幅に後退した形となり、廃止を求めていた委員からは、「これでは抽象度が高く、どこに向かうのか分からない」「廃止の方向で継続して検討する機会を早急に設けるべきだ」といった意見が相次いだ。

 一方、廃止に反発していた日本精神科病院協会の櫻木章司常務理事は、「今回の検討会では、精神科病院をめぐる誤った風説を訂正し、実りある議論ができた」とし、報告書案の書きぶりを評価した。

 医療保護入院とは、自傷他害のおそれはないものの、任意で入院する状態にない人を精神保健指定医の診察と患者の家族などの同意で強制的に入院させること。2018年度の届け出件数は18万7000件に上る。

 入院の判断基準があいまいで、同意を求められる家族の負担が重いこと、入院期間が長くなりがちなことが問題視されてきた。家族に同意を求める強制入院の仕組みは日本以外にないとみられる。

 今年8月には国連の障害者権利条約を批准した日本の障害者施策が、国連の委員会に審査される予定。医療保護入院制度は日本に対する改善勧告の対象になることが見込まれている。

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