『障害』を考える 6《日本政府の回答》
障害者権利条約に基づく国連・障害者権利委員会の対日審査に向けた事前質問への回答が外務省ホームページに掲載されました。
外務省ホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html)
第1回政府報告に関する障害者権利委員会からの事前質問への回答(和文仮訳PDF)
精神保健福祉に関する項目を抜き出します。
事前質問
生命に対する権利(第10条)
9. 以下について本委員会に対しお知らせ願いたい。
(a) 締約国(注:日本)の死の幇助に関する法令が本条約に従い,かつその一般原則を尊重していることを確保するためにとられた措置。
(b) 精神障害のある者に対する強制入院又は身体的及び化学的拘束の最中に又はその後に発生した死亡事案の件数,並びにそのような出来事を防ぐためにとられた措置及び加害者を起訴するためにとられた措置。
日本政府回答
生命に対する権利(第 10 条)
質問事項 9 (a) に対する回答
35. 自殺関与又は同意殺人について規定している刑法 202 条以外に、現時点で死の幇助に関する特別の法令は存在せず、政府、国会において法案を議論していない。
質問事項 9 (b) に対する回答
36. 本人の意思によらない入院又は身体的拘束の最中に又はその後に発生した死亡事案の件数については把握していない。
37. 精神保健福祉法に定める本人の意思によらない入院制度は、精神障害者であることのみを理由として適用されるわけではなく、精神障害のために自傷他害のおそれがある場合又は自傷他害のおそれはないが医療及び保護が必要な場合であって、入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態にある場合に適用されるものである。実施に当たっては、精神保健指定医による診察や入院措置についての本人への書面告知が義務づけられている。
38. また、精神保健福祉法上、身体的拘束は、精神保健指定医が必要と認める場合でなければ行うことができないこととしており、また、自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合、多動又は不穏が顕著である場合及びその他精神障害のために、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合に、代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われるものと定めている。
事前質問
身体の自由及び安全(第14条)
以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。
(a) 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」,特にその第29条,第33条及び第37条,並びに「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」を含め障害者の自由及び身体の安全を実際の障害又は障害があると認められることに基づき制限する法律を撤廃すること。これには,障害者の強制的な施設収容を認める法令を含む。
(b) 知的又は精神障害のある者の入院件数が増加していることに対応すること,及び彼らの無期限の入院を終わらせること。
日本政府回答
身体の自由及び安全(第 14 条)
質問事項 13 (a) に対する回答
63. 精神保健福祉法に定める本人の意思によらない入院は、上記質問 9 (b)回答を参照。また、行動制限については別添 1 を参照。
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下「医療観察法」という。)においても、精神保健福祉法と同様の仕組みがあり、医療観察法第 92 条で、入院対象者の医療又は保護のために必要な範囲内で、その行動について必要な制限を行うことができると定めている。指定入院医療機関の管理者は、同法第 93 条第 1 項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を遵守しなければならないとされている。当該基準において入院対象者の個人としての尊厳を尊重し、その人権に配慮しつつ、適切な精神医療の確保及び社会復帰の促進に資するものでなければならないものとしている。また、処遇に当たって、入院対象者の自由の制限が必要とされる場合においても、その旨を入院対象者にできる限り説明して制限を行うよう努めるとともに、その制限は入院対象者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行われなければならないものとしている。
64. 医療観察法において規定されている精神障害者に対する入院等の処遇は、殺人や放火などの重大な犯罪に当たる行為を行い、かつ、当該行為の当時、心神喪失又は心神耗弱の状態にあったと認定され、不起訴処分又は無罪等の確定裁判を受けた者について、当該行為を行った際の精神障害を改善し、社会に復帰することを促進するため、同法による医療を受けさせる必要があると認められる場合に行われるものである。処遇は、精神障害者であることそのものを理由として行われるものではない。処遇の決定に当たっては、対象者の鑑定を実施するとともに、弁護士や保健・福祉に関する専門家等の関与の下で審判期日を開催し、対象者に意見を述べる機会を与えた上で、裁判官と医師である精神保健審判員の合議体において、処遇の要否及び内容を適切に判断することとされている。(同法第 2 条、第 33 条ないし第 42 条)質問事項 13 (b) に対する回答
65. 精神障害者の入院件数及び 1 年以上の長期入院者も増加はしていない(統計別添 4 のとおり)。
権利委員会からの事前質問
日本政府の回答