わが国の精神医療は入院医療に大きく依存しており、医療費のほとんどが私立精神科病院で使われています。入院医療の質はたびたび国際機関から批判や勧告が出されるほど、国際水準から見て劣悪といえます。私たちはこの現状を変えるために、国の不作為責任を司法の場で問い、精神医療を抜本的に改革する方向転換をめざしています。

世界の主流は地域精神医療

 たとえば、カナダ・バンクーバー、米国・マジソン市等々。平均の入院期間が1週間から10 日で、日本のような超長期入院の方は、ほとんどいません。多剤大量療法といわれる、薬漬けもありません。重い精神障害をもっていても、ケアチームによる自宅への出張サービスが受けられ、一人ひとりが地域社会のなかで生き、尊重されています。すでに世界の趨勢は地域でのケアが当たり前で、医療と生活、人権の尊重がバランス良くシステム化されています。

保護という名の隔離続ける日本

 しかし、日本の現状はどうでしょうか。
OECD加盟国でみた場合、精神科病床の37%が日本にあり、10年以上の長期入院患者は4万5994人(2021年)。相変わらず、薬漬けにより当事者は苦しめられ、慢性化して閉鎖病棟に長期間閉じ込められています。
 病気は治っているのに、地域での支援が無いために入院を継続している社会的入院者が数万人おり、毎年2万人を超える方々が精神科病棟内で亡くなっています。人権の尊重には未だに遠い現状です。
 閉じ込めるだけの精神医療は施設症を産み、むしろ有害であることが世界の常識です。

障害者権利条約・対日審査

 2022年、国連の障害者権利条約・対日審査が行なわれ、勧告が出されました。勧告には「障害者の強制入院を、障害を理由とする差別であり、自由の剥奪に相当するものと認識し、実際の障害または危険であると認識されることに基づく障害者の強制入院による自由の剥奪を認めるすべての法的規定を廃止すること」と記されました。
 国の検討会でも、強制入院の廃止が議論はされましたが、結局法律の改正には盛り込まれず、解決には程遠い状況です。
 この国の劣悪な状況を改善するためにぜひ、私たちの活動に参加してください。

精神医療はみんなの課題

 家族や友人が精神=メンタルの不調になって、戸惑うことが多い精神疾患ですが、WHOの報告では、一生のうちに約三人に一人が深刻な精神の危機を迎えるとのこと。わが国では、五大疾患のひとつに数えられるようになりました。それにもかかわらず、人々の理解は進まないままです。
 精神疾患に対する差別や偏見は今も変わりません。慢性的な精神疾患を抱えている人が病気になり、手術が必要でも引き受けてくれる病院はなかなか見つかりません。救急搬送が断られることもあります。手術後の点滴チューブを抜いてしまうとか、暴れるとかの偏見が一般医療の関係者にもあるようです。そのようなことが全くないとはいいません。しかし、それは麻酔が切れるときには誰にも起きうることです。       
 精神障害者の作業所やグループホームの建設が計画されると、地域住民による建設反対運動が起こります。「何をするかわからない人々」「犯罪者の予備軍」といった誤った認識が根強く残っています。「近くにそうした施設ができると、自分の土地の資産価値が下がる」という声まであがります。
 精神疾患に対する偏見や差別はこの100年あまりの間に作り出されてきました。家族のなかで心を病んだ人が出ると、私宅での監置が義務づけられました。いわゆる座敷牢の時代です。ついで、病院収容の時代に入ります。医療が保障される時代にはなりましたが、結局何も改善されませんでした。閉じ込めておく場所が自宅から監獄のような病院に変わっただけでした。

▼欧米各国では
 1955年クロルプロマジンの開発によって、症状を軽くすることができるようになり、欧米の精神科病院は病床数も平均入院期間も大幅に少なくなりました。
 ノーマライゼーションの時代になり、欧米各国ではコミュニテイ・メンタルヘルス・ケアチームによるアウトリーチ(訪問ケア)によって、精神疾患があっても地域で暮らすのが当たり前になりました。

▼日本では
 わが国では。ガンなどでは術後五年間再発しなければ治癒したと考えられるのに対して、 精神疾患は治癒ではなく寛解といわれます。症状が収まっているが治癒はしていない。病気が治らないから治療を続ける必要がある。だから病院が必要だ。
 都道府県は財政難を理由に公的な精神病院の建設をしぶり、国は医療金融公庫という低利の融資システムを作って民間精神病院の建設を後押ししました。
 そのために、今では精神病院大国になってしまいました。しかも、OECDの平均入院期間が28日に対してわが国はその10倍となっています。多剤大量療法も改善されていません。患者中心の医療ではなく、経営中心、治安中心の医療が変わりません。

症状がなくなったとき、「患者」から「障害者」に

 「障害」とは何でしょう。身体の機能制約のことを指すのではありません。目が見えなかったり、耳が聞こえなかったりといった身体の機能の制約のことではなく、それらに起因して受ける不利益・不平等のことを社会的障壁といい、これこそが障害なのです。身体機能は個性でありその人にとって普段のこと。障害は社会に存在するのです。この考え方を障害の社会モデルといい、この不利益を受ける人が障害者なのです。
 精神疾患の場合、症状が治まっているのに治癒とみなされず何年も、何十年も入院させられ人生を失う。偏見にさらされるなど多くの不利益をこうむる。病気が治った後に、社会的障壁が立ちはだかるのです。いわば「患者」から「障害者」にさせられるのです。

身体障害者は施設に??
精神障害者は病院に??高齢者は。

 置かれている状況は、身体障害者も精神障害者も高齢者も同じではないでしょうか。高齢者なら特別養護老人ホーム、身体・知的障害者は障害者施設……。特性が共通する人たちを集めて管理しようとする。法的強制はなくても社会的圧力で入所を選択せざるを得ない。本当に本人は施設入所を望んでいるのでしょうか。
 訪問ケア・重度訪問介護など制度の脆弱性によって、ケアの負担が家族にのしかかる。解決は自己責任で。納税できない〝厄介者〟は施設という名の〝姥捨て山〟に閉じ込める。精神障害に関しては、精神保健福祉法によって強制入院が制度化されている分、わかりやすいにすぎません。
 みんな同じ状況だからこそ、保護を名目とした施設収容は障害者権利条約に抵触すると国連・障害者権利委員会は勧告したのです。
 世界はみんな一緒のインクルージョン=包摂・脱施設化に向かっています。日本だけがグループ化・施設化。本当にそれで良いのでしょうか。
 私たちの未来は、子や孫たちの未来はどういう社会であるべきなのか、考えていきませんか。

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