精神病院に閉じ込められたまま人生の大部分を過ごす人たちが多くいます。精神障害を持つ人も地域で暮らせるようにという世界の潮流に逆行した日本の精神医療は、国際的にも大きな批判を浴びています。この訴訟は、日本の悲惨な精神医療を長年にわたり放置してきた政府の不作為責任を問い、国家賠償請求を行うものです。私たちは、この訴訟を通じて、病院中心に偏った精神医療から地域精神医療への転換が行われることを目指します。
さらに、家族訴訟も含めて、第2、第3の提訴を準備しています。これらの裁判を闘うための資金援助をよろしくお願いします。
CALL4のサイトから支援していただけます。https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000068
自由とは「自分で決めることができる世界」
国の精神医療政策と地域で生きる権利をめぐるストーリー
利根川を越えると群馬県だった。伊藤時男さんに会いに行く道すがら、寒空にぴゅうと風が吹く。静かだ。ときおり鳥の声だけが聴こえる。
「ジュースを用意しておいたからね」
丘のふもと、庭に面した家の、一階に伊藤さんは住んでいた。
居間には、伊藤さんが描いた絵画や、新聞に投稿した詩や川柳の切り抜きが、ところ狭しと並べてある。
「絵を描いたり、詩や川柳を書いたりしているときだけが、俺の『自由』だったから……」
訴訟へ
1968年、16歳の時に初めて統合失調症と診断された伊藤さんは、1973年から2012年まで、22歳から61歳までの期間、精神病院への入院を余儀なくされた。
初期を除いて精神症状がみられなかったにも関わらず、国の精神医療政策のために退院がかなわなかったことについて、伊藤さんは、「地域で生きる権利」を奪われたとして、厚生労働省を訴えている。
日本では今、精神病院の中で亡くなる人は毎年2万人を数える。病気は治っているが、地域での支援がないために入院したままの人も、数万人いると言われる。
平均在院日数は274.7日。5年以上入院している人の数は9万人に上る。