新刊『精神医療の特異な論理』

「ハンセン病訴訟」「旧優生保護法訴訟」に続く精神医療国家賠償請求訴訟はなぜ提起されたのか?

抗精神病薬の開発と人権思想の昂まりは、世界の精神医療を隔離収容型から地域精神医療へと転換させた。唯一隔離収容型の政策をなおも続けている国、それが日本であり、国連から是正勧告を受ける精神医療後進国となっている。その最大の要因は人権意識の停滞とそれを反映した法制度改革の遅れにある。
諸外国の精神医療改革から学ぶべきは、以下の3点に集約できる。第1に入院治療はAcute Care(急性期治療)に限定すべきであり、第2に強制入院の審査を限定的かつ実効性のある仕組みとすべきであり、第3にカネ(予算)とヒト(専門職)とモノ(支援)をコミュニティ・メンタルヘルスにシフトしていくことである。
「ハンセン病」「旧優生保護法」そして「精神国賠」と続いてきた国賠訴訟の歴史は、けっして不利益を被った当事者たちだけに止まる問題ではない。私たちが差別や偏見によって作り上げた社会的「障害」の壁を取り払い、多様性を尊重する自由で平等な社会を築いていく道程なのである。
高齢化した長期入院者と死亡退院者であふれる精神科病院の現状を問い、海外と比して特異な日本の精神医療政策と法制度の抜本的な転換を求める、変革のための理論の集成。

精神国賠研究会書籍委員会編纂の書。

出版社 : 批評社 (2026/1/13)
発売日 : 2026/1/13
言語 : 日本語
単行本 : 288ページ
ISBN-10 : 482650750X
ISBN-13 : 978-4826507509
寸法 : A5判並製
定価:3300円(税込)

目次

第Ⅰ部 日本における精神医療の歴史と課題

第1章 近現代日本における精神医療政策 (古屋龍太)

第2章 精神保健福祉法の問題点 (塩満卓)

第3章 強制入院制度 (吉池毅志)

第4章 精神医療審査会に求められる機能と実態(松本真由美+杉山恵理子)

第Ⅱ部 諸外国における精神医療の状況

第1章 オーストラリアNSW州における精神医療改革 (松本真由美)

第2章 ベルギーの精神保健改革 (中村佳世)

第3章 カナダの精神医療政策 (木村真理子)

第4章 イギリスにおける脱施設化の歴史と現状 (瀧本里香)

第5章 フランスのセクター精神医療の状況と課題 (池田真典)

第6章 イタリアの脱施設化から照らし返す日本の精神保健医療福祉(大野美子)

第7章 韓国の人権強化への模索-保護入院制度の変遷(呉恩恵)

第8章 台湾2007年精神衛生法 (飯野海彦)

第Ⅲ部 精神医療と人権

第1章 障害者権利条約と総括所見をどう読むか (佐藤久夫)

第2章 日弁連 強制入院廃止へ向けたロードマップ (池原毅和)

第3章 精神科病院における権利擁護 (國重智宏)

第4章 人権思想の発展と精神障害者の人権の現在地 (佐々木正和)

第Ⅳ部 精神医療国家賠償請求訴訟

第1章 精神医療国家賠償請求訴訟の概要と裁判経過 (古屋龍太)

第2章 精神国賠訴訟の争点と意義 (長谷川敬祐)

第3章 医療保護入院の違憲性 (姜文江)